第51回 子育ての鉄則は恥をかかせないこと
『子育ての鉄則は恥をかかせないこと』、と書きましたが、恥をかかせないことは、人間関係でも重要なカギを握っています。
どんなにコミュニケーションが苦手な人でも無器用な人でも、どんな形にせよ、『恥をかかさぬ』をきっちり抑えておくことで、相手に悪い印象を与えたり、人間関係をこじらせてしまうことがうんと減ります。
逆に言えば、人に恥をかかせない人はそれだけでも、人に信頼され安心され愛されます。
愛され人間になるためには必要不可欠な要素です。
〇恥をかかせることには以下のような後遺症が残ります。
恥をかかされると、その人の事を嫌いになり、信頼できなくなります。
恥をかかされると、恨みとなり、復讐したくなります。
恥をかかされると、二度と会いたくない気持ちになります。
恥をかかされた思いは、消えることなくずっと心に残ります。
恥をかかされると、つぎになにか行動をするときに恥をかくことへの恐怖から、不安が襲うようになります。
恥をかかされると、人前に出ることが怖くなります。
恥をかかされると、自分に自信が持てなくなります。
恥をかかされると、チャレンジすることが怖くなり、もう一歩のところで勇気が出なくなります。
恥をかかされると卑屈になります。
恥をかかされると、大事なときに、緊張が強く襲ってきて、失敗をするようになります。
〇こどもに恥をかかせないためには、
1・叱るときにも思いやりを忘れない
2・品のない冗談・失礼な冗談を言わない
3・人前で叱らない
4・尊敬されようとしない
5・正しいことでも、正しいからと言って、押し付けない
6・言い方や言葉遣いに気をつける
7・普段の呼び方と人前の呼び方に配慮する
8・普段の接し方や、話し方と、人前では配慮する
9・こどもが嫌がる話を過去から引っ張り出さない
10・人に「うちのこもさぁ」と相手と同じであったとしても、こどもの評価が原点になることは絶対に言わない
11・人格を否定しない
〇こどもに恥をかかせないために
①叱るときであっても、“こんな言い方したら傷付くだろうな、だからこんな言い方にしよう”と考えるようにする
焦って叱らなければ、込み上げた感情に乗せて、そのままのセリフが口から飛び出すことはありません。
思い返してみると、まず、すごいスピードではありますが、一瞬、言う前にセリフが頭の中でみえるはずなんです。
出来事に反応する感情は自動的に浮かんできますが、言葉は感情と同時にみえて選んでいるはずです。
なぜならば、人によって言い方を普段変えていますよね。ということは、どの人も、言葉を選んでいるはずで、言いたいことも堪えて、呑み込んでいることも多いと思います。
真逆のおあいそを言ってみたり、笑ってごまかしたりなんてこともありますよね。
「つい、言っちゃった」も言ってはいけない相手に言ってしまうこともあると思いますが、よく考えてみると、“勢いで言っちゃった”ように見せてるけど、“えええーい!言っちゃえ!!”という気持ちがこっそり隠れているはずなんです。
では“言葉は選べる”とわかったうえで、でもなぜ、その言い方をやめられないかというと、人は恥をかかされると、ダメージ力が大きいことを知っているからです。
ダメージ力があるということは、それだけ、“効果がある”と言うことになりますよね。
そうすると、“二度とさせないぞ!”という攻撃的な気持ちから、やっつけてしまっています。攻撃することによる、ママの“スッキリ”も、手離せない魅力のひとつになってしまっています。
でも、それによる後遺症が、そのメリットに釣り合っていないぐらい、デメリットのほうが大きいことに気づいていないからできてしまうのです。
一瞬の効果を狙って、恥をかかせることよりも、効果的ではないかもしれないけど、何度も何度も同じことをじっくり教えていって、心に無理がないように、その子の未来に支障が出ないように、しつけを浸透させていった方が、めちゃくちゃ、こどもにとって健康的で、ごく自然なことですから、惜しいことではありますが、効果を狙いに行かずに、未来の有益を取ってもらえたらいいですね。
食品で言えば、病気のもとになる、添加物たっぷりの美味しい食べ物と、長生きのもととなる無添加の穴だらけの味気ないものの違いです。
時間の経過とともにその違いが現れます。
②について
笑いを誘いたくても、こどもをネタにした、品のない冗談はご法度です。
こどもはまだ“笑い”として場を盛り上げるために言っただけと受け止める、心の力が育っていません。
可愛くてからかうとか謙遜とか、いろいろ理由はあっても、それはママの都合でこどもには関係が無いことです。
例1 「あなたは家の前に捨てられてたのよ」「よその子になる?」
例2 「私の子だから、無理よね」「パパ似だから、そりゃしかたないよね」
例3 「鏡見たことあるの?」「目、ついてる?」
③他の兄弟や、友達へのみせしめに、ほかの子たちに圧力をかける意味でわざと叱ることがあります。
あるいは自分のママ友や親の前で、“ちゃんとしつけをしているよ”アピールをしていることもあります。
そのときは目の前のこどもを見ているのではなく、こども以外の人に向けて発信するために利用していることになるのですからこどもは被害者と同じです。
④こどもに「うわぁ凄いなぁ、さすがだなぁ」と褒めてもらいたくて、「あなただめねぇ、貸してごらん。こうするのよ」と自分が“デキる”ことを披露してしまうことがあります。
そのときの意識は“自分”に向いていて、こどもに対して“恥をかかせてやろう”なんてサラサラないのですが、結果的にそうなってしまっています。
こどもは親を超えていくものなのに、自分がいつまでもこどもの上に君臨してしまうと、こどもは「ママにはかなわないや」という尊敬ではなく、「自分はダメだ」の自己卑下をするようになり、こどもの可能性を摘み取ってしまうことになりかねません。
⑤正論も、真正面からズバッと遠慮なしに言われると、「あなたはダメ!」と直球で完全否定していることになってしまいます。
正しいこととわかっていても、きつい言葉で言われると、批判されているようで、屈辱を感じます。
すると人格に“卑屈さ”が加わります。
⑥キツイ言い方や吐き捨てるような言い方、大きな声、乱暴な言葉遣いは、あきらかな上下関係を作り、ママには支配的な印象を持ち、服従を強いられているような感覚を感じさせます。
皮肉、嫌みは、悪意を持って、こどもの心を傷つけ、ねじ伏せにかかっているわけですから、言葉の暴力です。大人ほどに語彙を持っていないこどもは、反論も許されず、サンドバック状態の心を守り切れません。
⑦・人前で、家庭でのいつもと同じに「〇〇ちゃん」「〇〇くん」、あるいは愛称で呼ぶと、恥ずかしかったりします。
優しいママという評価で、人にみられたいかもしれませんが、人前では呼び捨てか、名前を呼ばないように頑張るか、できれば、「人前で呼ぶときはなんて呼んだらいい?」などとこどもに希望を聞いておけるといいですね。
⑧・いつもは仲良しでも、人前では距離を置いてほしいかもしれません。
この事に関しては、“こどもと相談”は難しいかもしれません。
なぜなら、“人前で仲良くするのは恥ずかしい”ということ自体も恥ずかしいことが多いからです。
結構、「別にいいよ」「特に気にしないけど」と答えることが多いですが、実際、ママがそれを信じて、いつもどおり接していると、それに対して、嫌な思いをしていたり、悩んでいることが多いです。
でも、「ママが可哀想だから・・」と言います。
優しいですね。
ですから、こどもが本当に仲良し親子を自慢したい、見せつけたいと思っているなら別として、不明である場合は、聞かずとも、物理的に距離をとることと、人前であまり接触しないようにしてあげたほうが無難です。
こどものほうから近づいてきたときだけ、優しく、いつもどおりというよりは、謙虚に、こどもを立てて接して、いいかっこさせてあげられるといいですね!
⑨・「あなたは昔、こうだった」話もいろいろですが、ママがこども可愛さにいっていても、昔のことをほじくり返さないでほしいことは大人でもあります。
そして、こどもは大人とは違って、心がまだ成長過程なので、“恥ずかしい”と感じやすいです。ママがどんな気持ちで話しているかということにまで、思いが至りません。
自分がどう感じるか、で精一杯です。
自分が感じる気持ちには敏感だけど、人が感じる気持ちには鈍感、こどもは“自己に敏感、他者に鈍感”だと言うことを忘れないでいれば、出していい話と出さないほうが無難な話を分けられそうです。
⑩・自分に自信がないとこどものネタで話題を作ろうとしてしまうことがありますが、人に自分のことを話されるのは結構ヒヤヒヤするものです。
失敗ネタをおもしろおかしく話されても、顔で笑って内心は結構傷付いています。
こどもが聞いて、嬉しくなるような話は良いとして、喜ぶか喜ばないかは定かでない不明な内容は、傷付くかもしれないので、ネタにするのは極力やめましょう。
例 Aママ「うちの子、成績悪くって・・」Bママ「あら、うちの子もなのよ~」
例 後輩Cママ「うちの子、しょっちゅうおもらしするんです・・」先輩Dママ「あら、大丈夫よ、うちの子も、Cくんぐらいのときはよくしていたけど、いつの間にかしなくなったから」
⑪「どうしてあなたはこんなことするの!?」「あなたはいつも・・」「こうに決まってるでしょ!?」「なぜわからないの?」「いつも言っているでしょ?」「何を考えてるの?」「それぐらいわからないの?」
は、事柄から逸れて、“あなたはダメな子”“出来が悪い子”という、こどもの人格に難ありとも、“能力がない”とも言っています。
例え、昨日や、ついさっきのことであっても、引きずらないで、「これはしちゃだめ」と、その瞬間のその事柄について叱ってください。
もしも、不自然に同じことを繰り返すときは、“叱る”を意識するのではなく、こどもが結果そうなってしまう環境下にいないか(部屋が散らかりすぎていて失くしものをしやすいとか、大人が起きているから寝る時間が遅くなりがちで寝不足など)、あるいは、こどもの精神状態(口うるさく言われすぎて精神不安定になっているなど)、または、こどもの特徴的なものか、など、考えてみてください。
その上で、必要な、対応や、関わり方を模索してみてください。